単に貸付といっても、貸付の種類によってそれぞれ特徴がある。
重要度という点ではそれほど気にする必要もないものだが、場合によっては大きな意味を持つ場合があるので、覚えておいて損はないだろう。
まず、街金などで見られる証書貸付というものがある。
これは一般に行われる貸付で、借用書を書いて金銭の交付を受ける貸付方法だ。
個別貸付と呼ばれることが多い。
個別貸付の特徴は、将来の貸付を予定しない、1回限りの契約である。
だからといって、途中で追加で借りることができないというわけではない。
契約書を更新(書き直す)する、あるいは、新たな別の契約書を取り交わす事で追加融資は可能だ。
これに対し、将来の貸付を見越し、1回の契約で何度でも繰り返し借り入れができる契約の事を、包括契約という。
通常はこの方法による貸付の方が圧倒的に多い。
例を挙げると、ATMやCD機などでお金を借りる事ができるが、いちいち借用書は書いていない。
これは、包括契約によるものだからだ。
したがって、大手消費者金融やカードローンなどの貸付は、包括契約がポピュラーな契約ということになる。
包括契約が広く利用される背景に、事務作業の簡素化や利用者の利便性に優れた優位性を持つ点にある。
借りる度に毎回借用書を書いていたのでは、貸す方も借りる方もいちいち面倒だ。
しかし、ATMなどによるカードローンは、煩わしい事務作業が一切ない。
●包括契約と個別契約で別れる過払い金の行方
実はあまり知られる事のない事実として、包括契約と個別契約では、過払い金返還請求の際に有利・不利がある。
例えば、過払い金を計算したところ、帳簿上の完済日よりも前に完済した事になるケースが大半を占めるが、ここで時効という問題がクローズアップされる。
過払い金返還請求の時効は、最後の取引きから10年間となるが、包括契約の場合は将来も貸し付ける予定がある契約なので、帳簿上完済日が最終取引日となる。
一方、個別契約の場合は、将来貸し付ける予定がない契約なので、過払い計算後の日付が完済日とされる。
つまり、過払い金返還請求者にとっては、個別契約は不利という事になるのだ。
業者によっては、個別契約を専門とする業者もあるので、過払い金請求をする場合は契約内容を確認しておくことをお奨めする。
高い弁護士費用を払って、過払い金が一銭も戻らなくては、愚の骨頂である。
以上、契約の種類によって、性質が異なるということをご理解頂ければ、幸いである。